望月守宮(=もちづきやもり)作による第40回メフィスト賞受賞作。文句なしの出来栄え。
この作品では、「ヒトデナシ」と呼ばれる怪異、或いは妖怪とでもいうべき存在が、全体を通じて大きな役割を果たしている。物語の世界では通常の物理法則に加えてヒトデナシによる人智を超えた出来事の存在を肯定している。また、世界そのものも現実の世界に似た架空の世界を作り上げている。それらのバランスがよく調和し、無理のない展開となっている。
無数の顔をもつ怪盗(=ヒトデナシ)、ヒトデナシ無貌によって顔を奪われて以来やる気のない探偵、探偵に対して生意気な探偵助手など、この物語の中心人物たちは乱歩の怪人二十面相に対する一つのアンチテーゼのようになっている。その辺りも作品の魅力の一つであるといっていいと思う。
ヒトデナシという特殊な力を持った存在がありながら、それらの特殊能力による乱暴な解決ではなく、きちんと筋道の立った解決がなされている点も非常に好ましいと思う。全体として伏線の張り方などもとても上手くできているし、また、何よりも読んで面白い。
今作は序盤から中盤までは、探偵助手と探偵の出会いだったりなどに割かれているが、自作以降はそういったことは既知として話が進むであると考えられるので、最初から物語そのものを楽しみたいと思う。主人公である探偵助手+探偵とヒトデナシ無貌の対決や、今回は名前だけの登場だった、三探偵(の残り二人)の存在など、続編に通じる要素などもいくつか見られたのでその辺りをどう扱うかにも期待したいと思う。まずは、2009年秋に予定されている「無貌伝 〜夢境ホテルの午睡〜」の登場を待ちたい。
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無貌伝 〜双児の子ら〜
望月守宮
講談社
講談社ノベルス モI-01
2009年1月8日 発行
ISBN:978-4-06-182632-8 C0293
401頁
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