2009年9月30日水曜日

スリー・パインズ村と運命の女神

スリー・パインズ村と運命の女神
ルイーズ・ペニー
長野きよみ 訳
ランダムハウス講談社
ランダムハウス講談社 ヘ4-2
2009年6月10日 第1刷発行
ISBN:978-4-270-10301-2 C0197
554ページ
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 Dead Cold /(U. S.  title: A Fatal Grace)
by Louise Penny
2006 /(2007 in U.S. )
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スリー・パインズ村の不思議な事件』に続くシリーズ第2作目の邦訳。

今作の舞台も前作と同じく、スリー・パインズ村。前作を読み、続きを読みたくなった人間としては、期待以上の出来だったと思う。前作と同じく登場人物たちは生き生きと動いている。また、登場人物たちにとってみればかなりつらい事件が起きているにもかかわらず、読後感も全く悪くない。こういったタイプの作品はあまり無い(というか、読んでいる中にはない。ひょっとしたら知らないだけで存在するのかもしれないが)ので、より一層印象的に感じた。

アガサ賞受賞などの宣伝文句が並んでいるが、看板に偽りなしというか、それ以上に面白い作品だと思う。次作も連続で受賞したようなので、また、邦訳が出るのを楽しみに待ちたい。それとも、いちいち待っていないで英語で読んでみるか。

花窗玻璃(=はなまどはり) シャガールの黙示

花窗玻璃(=はなまどはり) シャガールの黙示
深水黎一郎
講談社
講談社ノベルス フK-04
2009年9月7日 第1刷発行
ISBN:978-4-06-182671-7 C0293
312ページ
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深水黎一郎の講談社ノベルスでの4冊目。シリーズとしては、『エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ』、『トスカの接吻 オペラ・ミステリオーザ』に続く第3作目。講談社ノベルスでの1作目がメフィスト賞のノンシリーズの『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ !』。

シリーズ前2作では、通常のミステリ小説のように、同時進行で発生する事件を追い、解決するというスタイルだったが、今作では作中作として、既に解決している事件を探偵がワトソン役の人物に話す(というか、今作では小説として読ましている)という形をとっている。

今作の舞台は、フランスのランスとなっていて、このシリーズの特色を考えると、日本国外の事件を扱うというのは、ある意味で ごく当然という印象を受ける。あるいは、この辺りが作中作という形を採用した理由かもしれない。ワトソン役に警察官を選択した以上、日本国外の事件に巻き込まれるという手は使いづらいし。

読んでみての印象としては、同シリーズの前2作、特に前作と比べるとやや弱いという印象を受ける。或いは、作品中の大聖堂やシャガールといった部分のイメージがなかなかないからかもしれないが、どうしても前作の方が濃度が濃いように感じる。特別出来が悪いとは思わないが、それでももっと事件が連続して起きるとか色々と期待してしまうからかもしれない(今作では、探偵が登場した時点で既に事件自体は過去のものとなっていて、新たに起きた事件を調査する場面より、過去の事件を解釈する方がメインになっていたし)。

また、今作ではカタカナを使わずに漢字と当て字ですべてを表そうとしている。実際読んでみると、ルビもかなり振ってあったこともありあった、当初予想していた、

放課後の魔術師(=メイガス) ④ワンサイド・サマーゲーム

放課後の魔術師(=メイガス) ④ワンサイド・サマーゲーム
土屋つかさ
角川書店
角川スニーカー文庫 S-208-4
平成21年8月1日 初版発行
ISBN:978-4-04-474004-7 C0193
317ページ
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シリーズ第4巻。短編集?この巻は、メインストーリーではなく、閑話休題というか、次の段階へのつなぎ、或いは準備のような感じ。

まあ、登場人物の設定とかを考えると、肝心なストーリーを外してしまうと、あとは恋の行方とか、そっちの方向に行ってしまうのは、やむを得ないところがあると思うけれど、そればかりというのもちょっと退屈に感じる。色々なゲームなど、ガジェット的な要素はいくつかあるが、もう少し、1話1話の方向性というか、毛色の違う作品であった方が楽しめると思う。

まあ、次の巻に向けて、メインキャラクター候補?が一人増えたし、第5巻も既に出ているので、また、本編を楽しみにしたい。

探偵諸説のためのノスタルジア「木剋土」 Nostalgie I "L'arbre" pour HONKAKOU japanais

探偵小説のためのノスタルジア「木剋土」 Nostalgie I "L'arbre" pour HONKAKOU japanais
古野まほろ
講談社
講談社ノベルス フJ-07
2009年6月4日 第1刷発行
ISBN:978-4-06-182648-9 C0293
406ページ
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「探偵小説」シリーズの第3作。

このシリーズ(というか、もう一つのシリーズもそうだが)は普通のミステリとしても読めるし、更にその上にもう一層、妖怪?というか、そのようなものを重ねている。そのこと自体も、また、全体的にうっとうしい文体というか作りになってもいるのもあり、好き嫌いが結構あると思う。個人的にはあまりやりすぎるのは好きではないが、最近はその手の小説が(ミステリに限らず)増えているように思う。

そういった中で、今作は終盤までは普通のミステリとして読めるし、その意味では前2作よりもまともかもしれない。ただ、最後の部分、その終わり方はどうなのだろう。結局、どうなったのか、というか、今までのは何だったのか、という感じで終わってしまった。次巻でどうなっているのか、というのもそうだが、結局何がしたかったのかが少し分からないように思う。

もっと言うと、このシリーズ自体の位置付けというのもよくわからないし。まあ、もう少し様子を見ようという感じ。

2009年9月24日木曜日

うみねこのなく頃に Episode 1 Legend of the golden witch(下)

うみねこのなく頃に Episode 1 Legend of the golden witch(下)
竜騎士07
講談社
講談社BOX リA-19
2009年8月3日 第1刷発行
ISBN:978-4-06-283721-7 C0093
307ページ
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上巻の続きから。

上巻が誰一人として殺されずに終わっているので、この巻では最初から派手にスタートしている。最初の展開としては、ミステリらしく手加減なしに結構派手に死んでいく。ただ、普段割とミステリを読んでいる人間として誤算&不満はいくつかあった。

というのは、もうちょっとミステリに対して忠実というか、誠実になっているかと思ったことだ。つまり、「最初の夜に6人が生け贄」という予告に対して6人が1度に殺されるのはいい(いや、普通は良くはないのか)。しかし、「2日目の夜に…」、「3日目の夜に…」という予告にも関わらず、数時間後にそれが実行されるというのは、ミステリ的には反則、というかずるいだろうと思う。勿論、そんなに悠長にやっている暇もないというのはわかるし、そうしたからと言ってその点で大きな不都合が生じたわけではないが、予告をした以上それを忠実にやってもらいたい(まあ、結局この作品はそういう王道のミステリではないということなのだろうが)。

あと、個人的に殺されるだろう人間と殺されないだろう人間、という風に予想していたが、あっさり外れた。まあ、考えてみれば当然ではあるが、ああ、そうなのという感じだ。

その他、この作品『うみねこの…』にしても、前作『ひぐらしのなく頃に』シリーズと同様だった、というのも一つ特徴だろう。あれは、1回限りのものと思っていたが、作者側としてはそういうつもりでもないようだ。前回のは、言ってみればパラレルワールド系といった感じだったが、今作はどうなのだろう。まだ、Episode 2を読んでいないが、雰囲気としては、ふりだしにもどる系か。まあ、もうじき次が出るだろうから、それを待ちたい。個人的には、ミステリっぽい要素のある今作の方が前作『ひぐらし…』よりもすきな部類に入ると思う。

イスカリオテIII

イスカリオテIII
三田誠
アスキー・メディアワークス
電撃文庫 さ-10-7
2009年7月10日 初版発行
ISBN:978-4-04-867909-1 C0193
353ページ
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シリーズ第3巻。

このシリーズはまだ3冊だが、ここまで読む限り非常に面白いと思う。作者事態がかなり上手いというか、流石にキャリアがあるだけにレベルが高いと思うし、何よりテンポが良い。毎回、ちょっと(?あるいはかなり?)強くなった敵がきちんと出てきて、それに勝つために主人公側が変化、というか成長?して、おまけにストーリー自体に関わるような割と重要そうな情報が少しずつ明かされて、という風にある意味ではこの手の小説の王道ともいえるやり方をきちんと押さえている(ということは、このシリーズが何冊も沢山出るというのはあまり期待すべきでないかもしれない)。また、(今のところは)1冊ごとに事件が解決していて、次巻に続くといったことがないのも個人的には大きい。最短で1ヶ月、続きを待たされるのはちょっとねという気がする。

勿論、他の作品も抱えているのでなかなか難しいとは思うが、なるべく早く次の巻が出ることを期待したい。レンタルマギカの方(レンタルマギカ  滅びし竜と魔法使い)は結構大きな動きがあったし。そちらもそちらで楽しみではあるけど。

とある魔術の禁書目録(=インデックス)⑱

とある魔術の禁書目録(=インデックス)⑱
鎌池和馬
アスキー・メディアワークス
電撃文庫 か-12-20
2009年7月10日 初版発行
ISBN:978-4-04-867897-1 C0193
417ページ
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前巻17巻の続き(感想はコチラ)。

とりあえず17巻からはじまるイギリスでの事件は一件落着。ただし、きれいにすべて終わったわけではなく、また、次の巻へ待ったなしで動き出している。ここにきて、いよいよ神の右席のもう一人が姿を見せたり、シリーズそのものも佳境に向かっている。主人公の右腕など、まだ回収していない伏線がいくつかあるが、それをどう処理するのか楽しみにしたい。

しかし、この作品に限らず、バトルの場面がある作品(小説でも或いは漫画でも) について思うことだが、登場する敵キャラの力のインフレ具合がすごいことになっている。このシリーズはそもそも魔術あり、超科学ありと、初期設定に一応織り込み済みではあるけれど、それでもちょっとやり過ぎだと思う。あんまりやると先々進めづらくなると思うけど大丈夫なのだろうか。

まあ、次がいつ出るか、なるべく早く出てもらいたい。

2009年9月22日火曜日

砂漠のゲシュペンスト〔下〕

砂漠のゲシュペンスト〔下〕
フランク・シェッツィング
北川和代 訳
早川書房
ハヤカワ文庫NV NV-シ-25-7 NV-1201
2009年8月10日 印刷/2009年8月15日 発行
ISBN:978-4-15-041201-2 C0197
347ページ
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Die Dunkle Seite
by Frank Schätzing
1997
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深海のYrr〔上〕〔中〕〔下〕』、『黒のトイフェル〔上〕〔下〕』に続くフランク・シェッツィングの早川書房からの第3冊目の訳書。小説家としてみた場合、『黒の〜』、『グルメ警部キュッパー』に続く第3冊目にあたるらしい。

話の展開、あるいは犯人が暴かれる場面であったりは、ミステリとしてみればそう珍しくもないし、むしろ登場人物が限られている本書においては、ごく自然な展開なのかもしれない。その意味で、ミステリ小説としてみた場合、その出来は特別良いとはいえない。しかし、話の進め方や、細部の描写等々、最後まで飽きさせずに読むことは出来る。その辺りは、作者のレベルの高さだろう。

また、 本書においては、(湾岸)戦争、傭兵といった、単純に善悪で割り切れない問題、多くの人にとっては、非日常かもしれないが、現在の世界の裏側に確実に存在している問題を中心的なテーマとして扱っている。

また、インターネット等の作中での扱い方というのも非常に興味深い。本書が出版された時期の、インターネットを取り巻く状況について詳しいわけではないが、本書で書かれているような書き方、或いは見方は、当時というよりも、むしろ現在の視点に近い視点から書かれているように思う。

作者の狙いが、単純なミステリ作品というよりも、それらのテーマに対するメッセージ、或いは批判、として、小説の形態を選んだような書き方をしている。勿論、小説としても十分に楽しめる出来になっているが。

これで、早川書房からは計3作品が出版されたことになるが、この雰囲気だと他の未訳作品もいずれ出されそうなので、そちらも楽しみにしたい。

大人のための新オーディオ鑑賞術 デジタルとアナログを両立させた新発想

大人のための新オーディオ鑑賞術 デジタルとアナログを両立させた新発想
たくきよしみつ
講談社
講談社ブルーバックス B-1641
2009年6月20日 第1刷発行
ISBN:978-4-06-257641-3 C0273
174ページ
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現時点で、オーディオ機器の趣味というのはないが、ちょっとだけ興味があったので読んでみた。読んだ感想としては、ある意味では、ごくごく当然の結論というか、まあ、そうだよねといった感じ。

アンプ、スピーカといったオーディオ機器が非常に高額なものであるということは知っていたが、その善し悪し、或いは選び方等は全く知らなかった。その意味で本書は、どのメーカーのどれがベストだといった書き方はしていない。もちろん、このぐらいの費用でこの音であれば、というようなことはあるが、結局、どのような環境で聞くか、どのような音を求めるか、各自の必要に応じて、最適なものは変わってくるという、感覚的にも納得のいく結論であったと思う。その一方で、やはり素人からすると、手を出しにくい世界であるし、よくわからないという当初の考えを変えることもなかった。

ネコソギラジカル(下) 青色サヴァンと戯言遣い(=ざれごとづかい)

ネコソギラジカル(下) 青色サヴァンと戯言遣い(=ざれごとづかい)
西尾維新
講談社
講談社文庫 に-32-9 西尾維新文庫
2009年6月12日 第1刷発行
ISBN:978-4-06-276389-9 C0193
605ページ
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ネコソギラジカル(上)十三階段」、「ネコソギラジカル(中)赤き征裁vs.橙なる種」に続く、ネコソギラジカルの下巻。この巻で、西尾維新の戯言シリーズの文庫化も一段落。

どの巻だったか忘れたが(第1冊目だっけ?)、作者があとがきで文庫化に際しての修正は基本的にしていない、と書いていたが、改めて1冊目から読んでみて、全体的に結構鬱陶しいな、という印象が強い。このシリーズは、特殊な能力を持った人や、変な名前の登場人物が多い、というかほとんどだが(天才とか殺人鬼とかが何人も出てきたりなどなど)、最初の内は、割合ミステリ色強いというか、一応ミステリの枠に収まっていたが(メフィスト賞だし、講談社ノベルスだし)、途中からどんどん変な方に進んできた。それ自体別にどうとも思わないが、最近の作品を読んだ印象と比べると、かなりごちゃごちゃしている。つまり、鬱陶しい。

まあ、その間作者の書く技術が上がっているということの裏返しということでもあるが、本人としてはどうなのだろうか。その辺はよくわからないが、このシリーズの位置付けがどういう風になっているのか、というのは少し聞いてみたい気もする。

この巻で人まず、文庫化も一区切りだと思うが、その他のシリーズの文庫化等はどうするのか。あるいは、同シリーズの番外編的位置付けのあの作品たちは。個人的にいえば、過去の作品の文庫化というのも悪くはないが、現在進行形で進んでいる作品、シリーズを一日も早く読みたいと思う。

万年筆を極める

万年筆を極める
赤堀正俊 監修
かんき出版
「上手になる本」シリーズ
2008年2月22日 第1刷発行
ISBN:978-4-7612-6501-4 C0070
159ページ
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 全体的に物足りない印象。この本のタイトルは「万年筆を極める」となっているが、極めるというかなり大きなタイトルを付けていることを考えると、ちょっと誇大広告とはいわないまでも内容的に少々弱いと思う。むしろシリーズ名の「上手になる」位が妥当だと思う。

 本文の内容自体は(勿論門外漢なので、正誤の判定は出来ないが)きちんとしているという印象だし、カラーの写真も沢山あり、魅力的だと思うが、本書の内容自体は参考図書としてあげている「趣味の文具箱」等とかなりかぶっているし、単純な分量的な面にしても、本書の方が圧倒的に少ない。扱う内容の幅にしても、何度も特集出来る雑誌と、1回でまとめる必要がある書籍とでは比べるべくもない。そうしてくると、敢えて本書が存在している意義はどこにあるのか。その辺りがいまいち不明瞭になっている。質、量共に勝てないのならば、例えば初心者に限定して、超初歩の初歩をキチンと書くなど、何らかのコンセプトが必要だと思う。

ゼロから学ぶベクトル解析

ゼロから学ぶベクトル解析
西野友年
講談社
ゼロから学ぶシリーズ
2002年5月10日 第1刷発行
ISBN:4-06-154662-7 C3342
214ページ
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 Amazonの評価はかなり高いが、個人的にはそれほど良いとは思わなかった。確かに、ベクトル解析について、面白く書いていると思うし、おそらくはこういった書き方をした数学の本というのはあまりないだろうとは思うが、やはりこれだけではまずいと思う。本書の意義自体は認めるにしても、この1冊でどうにかなるわけではない。必ず、きちんと理論を押さえた本での勉強が必要になる。その意味で、通常の勉強でいまいちイメージがつかめない場合に2冊目以降として使うのがいいだろう。だからこそ、参考文献等で、そういった1冊目候補となりうる歯ごたえのある本を紹介しておくなりして欲しいと思う。本書に限らず、学術書、専門書に属する本についていえば参考文献等は必須だと思う。

 

2009年9月8日火曜日

東京ヴァンパイア・ファイナンス

東京ヴァンパイア・ファイナンス
真藤順丈
アスキー・メディアワークス
電撃文庫 し-14-1
2009年2月10日 初版発行
ISBN:978-4-04-867519-2 C0193
307ページ
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 表紙と、それからタイトルから本物の(?)ヴァンパイアが出てくると思って読み始めてしまった。特に、そう思わせるような説明書きも何もないのだけれど、まあ、電撃文庫だし、そのくらいあり得ると思って読んでいたら、全然普通の人間ばかりだった。ちょっと肩すかしというか、まあ、思ったより普通だったね、という話だ。

 読んでみての印象は、思ったより普通だったね、或いはちょっと弱いかな、という感じだ。何組もの登場人物が別々に動いて、場面が何度も変わって、というのは、別におかしくもないし、上手く使えば非常に効果的でもあると思う。本書の場合は前半部分においては、それがそれなりに上手く機能していると思うが、後半、登場人物が合流して以降、または、主人公がいったん姿を消してその他のサブキャラがメインで動くようになって以降がどうしてもキャラとして弱いというか、全体的に印象が薄いというか、竜頭蛇尾といった感じで終わってしまっているのが残念だ(勿論、こういう結論が悪いとは思わないが、どうしても前半の勢いを考えると弱いかな、と感じてしまう)。

 それから、本文とは関係ないが、途中に入る挿絵(というより、漫画)がもうちょっとどうにかとならないかと思う。こういう作風ならまあ、しょうがないというか、それば良いのだろうが、同じ人物が描いたにしては、表紙とのレベルの差がありすぎると思う。まあ、どっちでもいいといえば、どっちでもいい話だが、気になったのでついでに。

ロングテール[アップデート版] 「売れない商品」を宝の山に変える新戦略

ロングテール[アップデート版] 「売れない商品」を宝の山に変える新戦略
クリス・アンダーソン
篠森ゆりこ 訳
早川書房
ハヤカワ新書juice 004
2009年7月20日 初版印刷 /2009年7月25日 初版発行
ISBN:978-4-15-320004-3 C0263
446ページ
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The Long Tail:Why the Future of Business Is Selling Less of More
by Chris Anderson
2006, 2008
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原書は2006年7月にアメリカで刊行されベストセラーに、次いで2008年7月に改訂、更新された。日本語版は本書と同じく早川書房から2006年9月に発行された。原著とこの版の変更点は、時間の経過に伴う、全体的な加筆修正とマーケティングについての章(第15章)と、補遺が付け加えられた点。以下感想。

筆者は「ロングテール」とそれを上手く利用して経済活動を行う企業に対してかなり好意的な見方をしている、また、既存の企業に対してもそのような行動の仕方を奨励しているという印象を受けた。それ自体は、もちろんそうなのだろうし、その点について異論はないのだが、iTunes Music Storeであれ、Googleであれ、或いは、本書に登場する多くの成功例とされる企業は、時代の流れに上手に乗った企業としてほとんど手放しで賞賛に近い扱われ方をしているように感じた。もちろん、ロングテールのすごさ、インパクトを示そうという意図ならば正解だと思うが、もう少し批判的な見方をしても良いのでは、と思ってしまう。

次、本書を通じていくつもの成功、或いは失敗の例を見ると、日本の大企業、あるいは政策というのはかなり遅れていると思えてくる(特に、著作権に関するくだりなどはすぐにでも考えるべき問題だと思う。先送りにすることによるメリットは何もないと思う)。まあ、実際遅れているのだけれど、一方でこれだけ先進的な企業が出てくる国があり、翻って、日本はというと、ちょっとひどいというか、このような国とまともに経済競争をしてもまず勝ち目はないなと思ってしまう。その意味では、本書は起業家というよりも、法律だとかそういう下らない規制ばかり作っている人たちが真っ先に読むべき本だと思う。

本書を書くにあたり、著者はいくつもの企業に取材を行っている。勿論、雑誌ワイアードという名前に強い効力があったりもしたのだろうが、日本の企業が外部の人間にこれだけデータを見せるということがあるかな、とちょっと考えてしまった。その点については、純粋にうらやましいと感じた。法律にしても何にしても色々な点でオープンな方が良いように思える本だった。

直接的な言及というより、本文中に何度か出てくるという程度だが、何度かクラウドソーシングという言葉が出てきた。本書の中で触れられているものの中には、正にこのクラウドソーシングを利用しているものが少なくない。その点では、同じく早川書房から新書で出ている「クラウドソーシング—みんなのパワーが世界を動かす」と通ずるところがあると思う。

また、Chris Andersonの新著"Free: The Future of a Radical Price"が2009年7月に出たらしい。

2009年9月1日火曜日

砂漠のゲシュペンスト〔上〕

砂漠のゲシュペンスト〔上〕
フランク・シェッツィング
北川和代 訳
早川書房
ハヤカワ文庫NV NV-シ-25-6 NV-1200
2009年8月10日 印刷/2009年8月15日 発行
ISBN:978-4-15-041200-5 C0197
398ページ
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Die Dunkle Seite
by Frank Schätzing
1997
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 上巻。感想等は下巻と併せて。

レンタルマギカ 滅びし竜と魔法使い

レンタルマギカ 滅びし竜と魔法使い
三田誠
角川書店
角川スニーカー文庫 S-177-16
平成21年7月1日 初版発行
ISBN:978-4-04-424922-9 C0193
361ページ
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 前作『レンタルマギカ 旧き都の魔法使い』の後半部。

 この巻は第2部の最終巻と位置付けられており、ここまでの流れをとりあえずは一区切りにしている。今までの巻では、妖精眼が何であるか、或いはそもそも全体のストーリーがどこに向かって進んでいるのか、などなかなか読めなかったが、とりあえずここまでの流れが一段落したので、多少は見通しが良くなったと思う。まだ、最終的なところはわからないが、最後の方の光景も、また、今後のアストラルについても、先代のそれに近づくだろうとはある程度予想出来る。

 ある程度の予想を立てた上でこちらの読みをどう裏切ってくれるのかについても今後は期待して読みたい。