高田崇史
講談社
講談社ノベルス タS-31
2010年10月6日 第1刷発行
ISBN: 978-4-06-182735-6
C0293
396ページ
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講談社ミステリーランドのシリーズとして、2004年に書かれた『鬼神伝 鬼の巻
「QED」や「カンナ」など他のシリーズは読んでいるが、ミステリーランドの方は、そもそも子供を読者対象として想定して書かれたものであるので避けていたが、今回、ノベルスになったということもあり、読んでみた。
作品の基本的なメッセージは非常にシンプルだ。つまり、他のシリーズと同じく、今現在我々が歴史として認識しているものが、そもそも強固な客観的な事実などではなく、様々な争いの結果としての、極めてアンバランスなものでしかない、ということを言っている。したがって、結局の所、この本(というよりも、ミステリーランドのシリーズとして書かれた2作品)の主たる目的は、その認識を読者である少年少女に示すことにあったのだと思う。
この作品はメッセージという点では、他シリーズと共通しているが、その一方でアプローチの仕方は大いに異なっている。「QED」や「カンナ」がミステリという枠組みを通じて、現代から、過去の歴史を見る、という方法をとっているのに対し、この『鬼神伝』においては、主人公がファンタジー世界(の、そのまた過去の時代)に入り、当時の歴史に現在進行形で向き合っている。
少年少女向けのファンタジーであるためか、人対鬼、というある意味非常にシンプルな構造になっており、他シリーズの作品と比べると相当読み易くなっている。その一方で、主人公は平安時代で戦っていながら、その時代の人物たちが「歴史」という時間に対する認識を持っているなど、メタ的な構造もあり、その辺りが少し緩くなっている。或いは、歴史上の人物や、神話上の生き物、妖怪が大勢出てくるというのも、少々やりすぎというか、若干気になる点ではある。
他シリーズを読んでいる人間からすると、物足りなさを覚えるかもしれない。一方、このシリーズが本来想定しているような少年少女では、たとえ読んだとしても、本書の提示する問題意識を持つことすらほとんど出来ないだろう。ただ、どれだけの人が気付けるかはともかくとして、それほど多く売れた、とも思えない作品を映像化する動きがあるなど、そのメッセージは非常に重要なものだろうと思う。
cf. 映画『鬼神伝』のサイト
http://onigamiden.jp/
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